第06話-2

熱に浮かされるように一人、とある星にやってきたメイ

・・地球型の環境はほとんどの星で整っているが、この星は特に地球そのものと酷似していた

惑星「ヘリオス」・・リゾートには適した星だが、少なくとも彼女はここに何の因縁もないハズだ

・・なら、なぜ自分はここに立っているのか?


ようやく自分の中の衝動・・妙な感覚が薄れてきて、元の自分の思考で状況を理解する


「・・なんで、ボクこんなトコに・・?」


のどかな田舎町のような光景が広がる通りを抜けて、きょろきょろと辺りを見回す


・・中世ヨーロッパの作りに似た、いかにも伝統のありそうな街並み

彼女にとって面白そうなものはないハズなのに、なぜか興味がわく


「・・・・・?」


行く人行く人が見慣れない彼女に振り返る

・・よほど人が立ち寄らない星らしい、ここは。

それにしても活気がないように見える

所々で声は聞こえてくるのだが、いまいちそれが普通の会話には聞こえない


「・・なんだろう、どうしたんだろ・・・・?」


人々の冷たい視線を背に受けて、自分がここにいるのが悪いように思えてきた

・・すると・・一人の男が声をかけてきた


「・・お嬢ちゃん、名をなんと言う?」

「ふぇ?」


・・な、何?・・このおじさん・・・


メイが困惑するのも無理はない・・彼はサングラスに松葉杖、さらにはボロボロのロングコートを着ているという出で立ちなのだ

・・彼女でなくても、コレは怪しいと思うだろう。


「ぼ・・ボクは・・メイ、メイナード・・・」

「!!」


男が突然杖を手から落とし、がたがたと震え始めた

周りにいた街の者達も、いつの間にか全員が全員、こちらを見ている


「戻ってきたのかね・・・・早く立ち去った方が身のためだぞ・・・・」

「ふ・・ぇ・・?」

「・・帰れ・・・・「悪魔」め・・」

「ボクが・・悪魔・・・???」


周囲がざわめき立つ

・・悪魔め

・・よくも戻って来れたものだ

・・殺してやる

・・殺してやる


「あう・・・・・・・?」


その声が段々大きくなるにつれ、今度はメイに怯えの色が見えてくる

・・殺される・・?

・・なんで?


ぱんっ・・!!


「う゛ぁ・・・・・!?」


急に息が苦しくなる

心臓と反対側・・右の胸にいきなりの違和感・・・・


「っ!!・・・・くぁ・・・・っ!!」


突然飛んできた弾丸が胸部・・肺を貫通し、息苦しさと同時に激痛がこみあげてくる


「殺せ」

「殺してしまえ、こんなガキ」


銃声が二発・・

体に食い込む、鉄の塊の感触は、できれば二度と味わいたくないと彼女が思っているものだった


・・痛い・・・!!!!!!

叫ぶ声は口からは飛び出さず、ただ口を開けて喘いでいるようにしか見えない

何か重い物が振り下ろされる、風を切る音・・

鈍い衝撃を感じた後、左肩の感覚が消えた

・・潰されたのだ、スコップのような物で殴られて


・・なんで、ころされるの?・・

・・しにたくない・・


住人による三度目の攻撃を受けそうになった時、メイはとっさにセプターの力を発動した

住人の得物、床の構造物などが分解され・・瞬時に彼女の体を包み、姿を変化させる


「あ・・悪魔め!・・立ち上がりやがった!?」

「・・何で?・・ボクは何もしてないのに!!」


姿をロボットのように変えたメイに、住民は再び怯えの声を上げ、その姿の彼女を「悪魔」と呼称する


「ボクはメイナード=リィオン!・・ただの女の子だもん、それがどうして殺されなくちゃならないの!?」

「・・に・・逃げろ!」


住人達は、今度は逃げ出してしまった

メイはそのあまりの速さに呆気にとられたが・・セプター化を解くと、泣き出しながら大声で叫んでいた


「もう・・何がなんなのかわかんない~ッ!!ボクはなんも悪い事してないもんっ!!(泣)」


・・メイは一通り泣き叫ぶと、走って街を後にした

また襲われたのではたまらない、いかに再生が可能とは言っても痛いのは絶対にイヤだ

・・とりあえず、メイは一度衛星港に戻る事にした

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・・けーさつに訴えてやる~・・


撃たれた?殴られて死にかけた?・・・お嬢ちゃん、冗談はもう少し楽しいヤツにしてくれない?(汗)」


けーさつやさん・・S.Gの受付ではそういう回答を食らった

・・無理もない、セプターの事など知っているのはよほどの歴を持つ学者か、ユニオンの連中くらいだろう


「・・だって・・息ができなくなったり、痛かったり、痛かったり・・痛いんだよ、撃たれて痛かったんだもん・・」


メイが泣き出したのを見て、受付の女性は対応に困っていた


「どうしましたぁ?」

「レオネ三佐、この娘どうにかできませんか・・」

「・・?・・・あなたは・・どこかで見たようなぁ・・・・どこでしたかねぇ・・?」


ボケまくりの声は聞き覚えがあった


「あ・・レオネさんだ」

「はい、レオネですよぅ」


にこっ・・と微笑むレオネ

メイが会ったのは数回だが、それなりにつき合いのあるS.Gのメンバーだ。


「・・して、お嬢さんはぁ・・・誰でしたっけェ・・・?」

「ボクはメイ!・・お、覚えてないのぉ~・・?」


ごまかすのではないだろうが、レオネは笑いながら少し眉を下げた

・・本気で忘れてたらしい。

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そして・・メイは出張中だったレオネとその護衛を務める二人の隊員に連れられて、再びあの街を訪れた

街に人のいる気配はあるのだが、どうも出てくる気配はない

・・流石に、S.Gには手出しができないのだろうか?


「あ・・ここ、ここで撃たれたの」


メイが少し先行して、現場にしゃがみ込んで指を指す

・・地面にはべったりと赤い染みができていて、薬莢等の残りも落ちていた

陰惨な光景が頭に浮かび、誰しも気分を悪くするだろうが・・


「大変でしたねぇ~・・。」


レオネは相変わらずにこにこしながら、いつもと変わらない様子で答えた

護衛の二人も顔を見合わせる

・・どこまで鈍いんだ、このひと・・と。


「・・右胸を撃たれて、それから足と手に二発撃たれて・・さらに殴られて左肩を潰されて・・」

「あらあら」

「・・あらあら・・って三佐!普通死んでますよ人間!!」

「あらあら・・」

「・・三佐?」

「う~ん・・犯人は間違いなくこの街の人たちのようですねぇ・・何か情報ありますか?」


・・そんな事は最初っから本人が言ってるじゃないですか

ツッコミを入れたいのをこらえる二人


「・・前にあった事件の関係じゃないですか?・・「メイナード」って子供が起こした猟奇事件の・・」

ふぇっ!?・・ぼ・・ボクそんな事してないってばっ!!」


ムキになって叫ぶメイをレオネがよしよし、となだめる


「それで・・続きはどういう話なんですか?」

「確か・・7才くらいの子供が連続して12人を殺害したっていう事です」

「12人が12人、全員・・「死んでからも切り刻まれ続けた末道路のど真ん中に捨てられていた」っていう、おっかない話ですヨ」


二人の隊員は辺りを警戒しながら話を進める

メイの顔が怯えの色に変わった


「・・ボク・・じゃないもん」

「わかっていますよぉ、メイちゃんはそういう事できるような娘じゃないでしょう?」

「・・・・っ・・ひっく・・・・」


メイは泣き出してしまい、答えない

・・メイの怯えの原因はただ一つ・・彼女自身に「幼い頃の記憶がない」という事だ

ユニオンリバーに来る前には「リィオン」家の当主に拾われ、毎日を普通に暮らしていた

ロディ達とも普通に暮らし、過去の記憶などどうでもいいと思っていた


・・しかし・・もしかしたら、その事件は自分が起こしたものなのかもしれない・・

ひたすらに不安がこみ上げてくる


「ヤだ・・ボクじゃない・・ボクじゃないよぉ・・・・」

「だ、大丈夫だよお嬢ちゃん・・その子供は当の昔に施設に送られてるよ」

「そうそう、それに残忍な性格で頭も良かったって話だし・・」


・・ぴた、とメイの泣き顔が固まる


「・・それじゃ・・まるでボクがバカって言ってるみたいじゃない~(泣)」


レオネがなだめるが・・結局完全な対応ができない二人だった

住人もノーリアクションのようだし・・


「・・一度戻りましょう、三佐」

「ええ。」


詳細はよくわからないが、とにかく一度戻った方がいいような気がしていた

・・レオネもなんとなくイヤな予感を感じ取ったらしい・・珍しく、その目は鋭い光を放っていた

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